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前十字靭帯断裂(損傷)

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前十字靭帯損傷(ALS損傷)

前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)の断裂は、スポーツをしている方が負いやすい怪我の一つです。
運動中に突然膝の中の組織が「ブチッ」と切れる感覚や関節がずれる感じがあり、多くは立ち上がれないほどの痛みや関節に血がたまって腫れが生じたりしますが、その程度には個人差があります。

 

前十字靭帯が断裂をしたまま放置しても数週間で痛みや関節の動きは一旦改善し、あたかも治ったかのような状態になりますが、一度切れた靭帯が自然に治癒することはありません。 
症状が改善しても、前十字靭帯が切れたままジャンプやカットの動作をすると、膝が再びずれる状態(膝崩れ)を繰り返し、徐々に関節が壊れていきます。
前十字靭帯断裂には、半月板や他の靭帯の損傷を合併することも少なくないため、正しい診断と治療が必要であり、スポーツ復帰を目指すには、靭帯の機能を再獲得するために靭帯再建手術が必要です。

 

手術によって競技復帰はかないますが、適切な手術方法を選択し、しっかりリハビリを受けなければなりません。
時間と努力が必要なため、ご自身の怪我についての理解を深めることがその助けとります

本記事では前十字靭帯断裂という怪我の内容と治療について解説します。

目次

前十字靭帯とは

前十字靭帯は膝の中にある四つの主な靭帯のうちの一つです。ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)の後方から、すねの骨である脛骨(けいこつ)の前方についています。前十字靭帯と交差するように、大腿骨の前方から脛骨の後方についているのが後十字靭帯(こうじゅうじじんたい)です。
まずは、前十字靭帯の役割について説明します。

前十字靭帯の役割

前十字靭帯には、主に2つの役割があります。その内容と動きの例は以下のとおりです。

前十字靭帯の役割 役割の内容説明 動きの例
膝の前後の動きを安定させる 脛骨が大腿骨に対して前に出すぎないよう制御する 走ったり、ジャンプして着地したりするときに膝を支える
膝が自然な範囲で回旋するのを助ける 膝をひねるときに過度に回旋しないように支える サッカーやバスケットボールなどで急に方向転換をしても膝をスムーズに動かせるようにする

前十字靭帯断裂(損傷)とは

前十字靭帯損傷の原因

前十字靭帯が何らかの原因で切れてしまうのが、前十字靭帯断裂です。実際に受傷した際には「ブツッ」などという断裂音(ポップ音)を感じることもあります。

前十字靭帯の断裂が起こると、走ったり歩いたりしているときに急に膝が「ガクッ」となったり(膝崩れ)、歩くときに痛みを感じたりすることが多いです。膝の関節内で出血が起こり、痛みや腫れ、熱感を覚えることもあります。
半月板や軟骨が同時に損傷することもあることが知られています。

前十字靭帯断裂(損傷)の原因

前十字靭帯の損傷は、強く膝をねじったり、必要以上に膝が伸びたりすることで起こります。

具体的なよくある原因としては、次のようなことが挙げられます。

前十字靭帯断裂(損傷)の原因

  • 急な方向転換
    サッカーやバスケットボールをする方に多い原因です。急に方向転換をしたり、止まったりしたことで、前十字靭帯に大きな負荷がかかり断裂することがあります。
  • ジャンプした後の着地
    バスケットボールやバレーボールなどで、着地の際に膝が不安定な角度に曲がることで前十字靭帯が傷つきます。
  • 他の人との衝突
    ラグビーやフットボールなどでは、他の選手とぶつかり、膝に大きな負荷がかかることで前十字靭帯が切れることがあります。
  • 過度な膝のひねり
    スキーや体操などでよく見られる原因です。膝を過度にひねることで、断裂する場合があります。

前十字靭帯断裂(損傷)の症状

前十字靭帯の断裂が起こると、主に次のような症状が見られます。

前十字靭帯断裂(損傷)による症状

  • 激しい痛み
    受傷直後に起きます。痛みの程度は人によりますが、歩いたり立ったりできないほど強く痛む場合もあります
  • 膝の腫れ
    断裂による出血が原因で、受傷直後に起こります。徐々に悪化し、数時間でパンパンに腫れ上がってしまうこともあります。
  • 膝崩れ
    歩行中などに、膝がガクッと外れるように力が入らなくなることです。前十字靭帯の断裂によって膝が安定性を失うことで起こります。
  • 膝の曲げ伸ばしができない
    痛みや腫れが強いために、膝を自由に動かせなくなることで起こります。
    損傷した半月板が引っかかることで動きが制限されることもあります。無理に動かさないようにする方が良いこともあります。

前十字靭帯断裂(損傷)を放置すると

前十字靭帯の断裂を疑うような怪我を負った場合、必ず医師による診察を受けましょう。
損傷が部分的なもので済んだり、あまり痛まなかったりする場合でも受診してください。

傷ついたまま放置し、膝が不安定な状態で生活や運動を続けると、関節の他の部分に負担がかかり新たな損傷を引き起こすからです。
特に半月板や軟骨を損傷し、長期間放置すると関節の変形が進んで変形性膝関節症の状態になることが知られています。

 

怪我の直後には痛みや動きの制限が起こることが殆どですが、しばらく放置するとこれらの症状は良くなって、特定の力がかかった時だけ関節がずれる(膝崩れ)症状だけになることも少なくありません。
しかし将来の関節の破壊の進行を防ぐために、膝崩れを繰り返すことは避けなければなりません。
時間が経過するほど関節の変形が進みやすくなるため、前十字靭帯の断裂を疑う怪我を負ってしまったら、できる限り早く専門の医師に相談してください。

前十字靭帯断裂(損傷)の診断と検査

前十字靭帯断裂の診断は触診とMRI検査によって行います。
触診では次のようなテストを行い、靭帯が機能しているかを確認します。

触診によるテスト

ラックマンテスト

膝を30度くらいに曲げた状態で、医師が片手で大腿骨を抑え、すねを前方に引っ張ります。
このとき、異常にすねが動けば前十字靭帯が断裂している可能性が高いと判断されます。

前方引き出しテスト

膝を90度くらいに曲げた状態で、すねを前方に引き出します。
異常なほどすねが動く場合は、前十字靭帯が断裂していると判断できます。「KT2000」という機械で計測する場合もあります。

ピボットシフトテスト

膝関節を曲げながら、医師が膝をゆっくり内側に回転させ、足首を外側に引っ張ります。
前十字断裂が起こっていると、膝を20度ほど曲げたあたりで、脛骨が脱臼状態になります。

さらに、靭帯の他にも半月板や軟骨など他の組織の状況なども確かめるためMRI検査を行います。

前十字靭帯断裂(損傷)の治療・手術

前十字靭帯を損傷すると、自然治癒はしません。必ず専門の医師による治療が必要です。
スポーツをされる方、膝の不安定感が強い方の場合は、再建手術によって靭帯を作り直すことになるでしょう。


一方、高齢の方や普段あまり運動しない方などは装具療法やリハビリによって治療をする場合もあります。
症状が軽減する可能性はありますが、靭帯が自然につながることは望めません。
膝の不具合とうまく付き合いながら生活することになるでしょう。

前十字靭帯再建術について

前十字靭帯は再生せず、切れた部分を繋ぎ合わせて修復することは特殊な場合を除いて困難です。
そのため、別の部位から組織を移植して、新しく靭帯を作り直す再建手術を行うことになります。


移植する主な部位としては、膝前面にある膝蓋腱や太ももの裏側から膝の内側にある膝屈筋腱(ひざくっきんけん)、大腿四頭筋腱などが一般的です。それぞれの腱によって特徴があり、どこの腱を採用するかはスポーツ特性などの背景や手術方法などを考慮して選択されます。

 

また、手術は関節の内視鏡(関節鏡)によって行いますが、方法によって移植腱の設置・固定方法が異なります
当院では、スポーツの種類や筋力、年齢など、患者様の個別の事情や症状を考慮し、最も適した術式を選択しています。ここでは当院で採用している代表的な2つの術式を紹介します。

関節鏡下解剖学的四辺形BTB再建術)

前十字靭帯は、前方内側束と後方外側束という2つの束から成ります。
通常の手術では、これらを一つの束として再建しますが、この手術では2つの束を別々に再建するのが大きな特徴です。
具体的には、移植腱の両端を小さなチタン製のボタンやスクリューで固定をします。

この手術法には、主に次のようなメリットがあるといえます。

メリット

  • 自然な膝の動きを再現できる:本来の靭帯には2つの束があり、それぞれの束を別に再建することで、靭帯をより自然に近い状態にできます。特に膝を屈曲する際に、自然な動きをしやすくなるはずです。
  • スポーツをする方に向く:負傷前の自然に近い状態にできるため、特にスポーツをする方に適した方法といえます。膝を安定させやすいので、多少激しい動きも気にならずにできるでしょう。

ただし、屈筋腱を移植するために屈曲力に僅かながら影響する可能性があることと、一束で再建する場合にくらべて手術難易度の高くなるなど、医師の技術の高さが求められる手術でもあります。

関節鏡下解剖学的四辺形BTB再建術(きょうしか かいぼうがくてき しへんけい BTB さいけんじゅつ)

「BTB」とは「Bone-Tendon-Bone」の略であり、「骨-腱-骨」という意味です。
膝の前にあり、膝のお皿の骨である膝蓋骨(しつがいこつ)とすねの骨である脛骨を結ぶ膝蓋腱(しつがいけん)を移植します。
膝蓋腱は両端が骨についている「骨-腱-骨」の状態で存在しますが、この膝蓋腱の中央部分を、円柱ではなく四辺形の形で上下の骨片を採取して「骨-腱-骨」の状態で移植します。

この手術法には、主に次のようなメリットがあるといえます。

メリット

  • 膝が安定しやすい:骨の形を円柱ではなく四辺形にすることで、再建する靭帯の本来の捻りの程度を再現します。腱が骨とくっついた状態で移植するので、本来の形に近い形に再建でき、膝の安定感は高いといえるでしょう。
  • 強度が高い:骨と骨の癒合であるため、強度の高い癒合が期待できます。
  • スポーツをする方に向く:強度の高さから、ラグビーやアメフト、柔道などのコンタクトスポーツに向くとされています。

一方で膝蓋腱を採取するため、膝の前部に違和感が残る可能性があります。
痛みや不快感が生じる場合もあり、適切なリハビリをしっかり行わねばなりません。
また、通常のBTB腱は円柱で移植されることが多いのですが、当術式では四辺形とするため手術の難易度は増し一定の技術を要します。

当院では関節鏡技術認定医が治療を行います

当院は、日本膝関節学会の関節鏡技術認定制度の認定医が在籍する医療機関です。
認定医は関節鏡手術の分野で高度な経験と専門知識を備えています。関節の複雑な構造についても深い造詣があり、正確な診断が期待できるはずです。

 

さらに、細かい操作が必要な手術も適切に行えるだけの技術も備えています。
手術による傷が小さくて済むことも多く、日常生活はもちろん、競技への復帰も早まるでしょう。

術後から全治するまで

症例により個人差がありますが、一般にスポーツ復帰までは7~8か程度を目標にしています。
また、手術翌日から松葉杖での移動は可能となりますが、早期荷重を選択しない場合には2~4週間程度で徐々に荷重歩行を進めて行きます。

入院期間について

症例により個人差がありますが、早期退院を希望する場合には術後1~2週間程度、膝の動きが改善し階段昇降が可能となるまで入院での積極的リハビリテーションを希望される場合には最長約4週間の入院期間としています。
早期退院を選択した場合には、退院後の積極的な通院リハビリテーションをお勧めしています。
尚、当院は有床診療所ですので、入院基本料は大学病院等の半額以下と定められています。

リハビリテーションについて

できる限り早く日常生活や競技に復帰するには、適切なリハビリを受けることが非常に大切です。リハビリでは、前十字靭帯の断裂によって失われた膝の安定性を取り戻すために、膝周りの筋力を強化したり、関節がスムーズに動かせるエクササイズを行い、しっかり膝を屈曲できるようにします。
さらに、膝の周りの筋肉の強度が増すことは再発の予防にもつながります。再びスポーツに復帰して楽しみ、日常生活をストレスなく送るためにもリハビリはとても重要です。
当院の入院リハビリは、土日も含めた週7日体制で理学療法士による積極的なリハビリを行っています。

当院の特徴

01

スポーツ整形外科や膝、
肩を中心とした豊富な手術実績

2015~2019年で1,000件以上の手術を実施!
専門性の高い関節鏡視下手術にも対応

当院では、膝関節および肩関節の専門医が在籍し、過去5年間でスポーツ整形外科や膝、肩の手術を1,000例以上実施しています。さらに、専門性の高い鏡視下手術にも対応し、膝の鏡視下手術では、民間医療機関では数少ないJOSKAS(日本膝関節鏡)の関節鏡技術認定者が在籍しています。

02

医療×介護の連携!

当院で一貫して対応!
早期の日常生活への復帰をサポート

当院では、周辺地域にお住まいの方の心身ともに健やかで充実した生活を送っていただくべく、医療のみではなく介護によるサポートも提供しています。併設するヘルスケアブランド「すまいる」と連携することによって、医療と介護の複合的な支援の提供が可能です。

03

医療設備の充実で
高度な検査・治療・リバビリに対応

MRIや体外衝撃波治療器、パワープレート、
その他様々なリハビリ機器を導入

当院では、MRIやデジタルX線装置、超音波診断装置などの医療機器を備え、高度な検査・治療に対応可能です。さらに、体外衝撃波治療装置やその他のリハビリテーション機器、パワープレートなどのマシンを設置したトレーニング施設も充実しており、患者様一人一人に適したリハビリテーションが行える環境を整えております。

04

スポーツに精通した
医師・スタッフが在籍

競技特性に応じた
治療・手術、リハビリを実施

当院では、スポーツ医学を専門とする医師が複数名在籍し、スポーツによる障害の診断や手術、リハビリテーションまで積極的に取り組んでいます。また、理学療法士やスポーツトレーナーを含むリハビリスタッフが、競技特性に応じた治療やリハビリを行い、早期のスポーツ復帰を支援します。

05

大学病院に匹敵!
約20名の理学療法士が在籍

日常生活やスポーツへの
早期復帰を専門スタッフがサポート

理学療法士とは、ケガや病気で身体に障害のある人に対し、「立つ」「歩く」などの基本的な動作の維持・回復を目指し、「運動療法」や「物理療法」を用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門家です。当院では、約20名の理学療法士が在籍しており、高い精度の検査や治療が可能です。

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サイト監修者について

整形外科河村医院 院長

河村 禎人

スポーツ整形外科や膝関節の治療を専門として努め、一般整形外科以外にも関節の変形による痛みに対してのリハビリなど手術によらない治療にも取り組んできました。
また、前十字靭帯断裂や半月板損傷などの膝関節鏡手術を中心として、スポーツ外傷、障害の手術やリハビリに取り組んでいます。